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そば打ち名人赤羽章司さん

そば打ち名人登場

そば打ち名人赤羽章司さん(塩尻市)

長野県初の「名人」認定者

そば打ち名人

赤羽章司さんは、平成17年11月6日に行われた第10回全日本素人そば打ち名人大会で見事優勝し、「名人」に認定された。全国から腕自慢が集うこの大会で、長野県民が名人となるのは初めてのこと。赤羽さんは八度目の挑戦にしてその栄誉を手にした。
実は、赤羽さんには当社製品「臼挽職人」の開発にもご協力をいただいている。試作機で挽いた粉を見ていただき、実際にそばを打っていただいて、改良点をご指導いただいた。ソバは粉にする際、熱の影響を受ける。上質な粉が低回転の石臼で挽かれるのは、この熱の影響を極力避けるためで、「臼挽職人」についても、「石臼と同じ構造で挽けるように」とアドバイスをいただいた。そして「臼挽職人」は、最終的に「これならば合格点でしょう」とお墨付きをいただいたのである。つまり、「臼挽職人」には、日本一の素人そば打ち名人のノウハウや思いが詰まっているのだ。

赤羽さんがそば打ちを始めたのは、十数年前のことだった。友人が打った十割そばに魅了されたのがきっかけだ。初めは家庭用のボールで捏ねた。麺棒もホームセンターにあるような短いものでのした。できたそばは、太くて短くてお世辞にもそばと呼べるものではなかったが、自分で打ったものは何よりおいしかった。

そば打ちの魅力は、奥の深さにあると赤羽さんは言う。「同じ材料、同じ方法でやっても、二つとして同じものはできません」当然、そばを打つ際の心の問題も味を左右する。「食べてもらう人に喜んでいただけるよう、どれだけ自分の気持ちを込められるかが大事だと思います」

「信州そば」ブランドを高めるため、
素材に技術にこだわり続ける

信州そば

材料へのこだわりも尋常ではない。ソバは自ら畑を借りて栽培するほか、県内や福井、茨城などの産地から、殻のついた玄ソバのまま仕入れる。そこから、石抜、磨き、選別、皮むきをすべて自分でやる。こうしてできた「丸抜き」を挽くのは、自ら開発に関わった臼挽職人だ。「いつどこで誰がどうやって栽培したものか、履歴が分るものだけを使います。素性が分れば、自分も納得してそばを打てますし、食べる方にも説明できます。そして最高においしいおそばは、素材と適切な製粉、そして確かなそば打ち技術と思いやりの心の四拍子がそろって、はじめてできるのではないでしょうか」

おいしいそばを求めて信州を訪れるお客様は多い。しかし、その期待に応えるだけのそばがはたして提供されているだろうか。赤羽さんは素人の立場で「信州そば」のブランドを高めるために、そば打ち技術を研究し、さまざまなイベントなどでそばを振舞っている。

自宅のそば打ち工房で指導。信州から次の名人を

指導風景

赤羽さんは、自らが代表を務める「信州そばアカデミー」(会員60名)の活動で、各地のそば祭りで技術サポートを行うなど、そば打ちの達人の養成と、信州のそば文化の伝承に取り組んでいる。さらに昨年4月には自宅の敷地にそば工房を建て、そば打ち教室も開いている。取材に伺った日も、近隣から四人の素人そば打ち愛好家が、赤羽さんの指導を仰ぎにきた。皆さん、素人そば打ち段位認定制度の有段者で、より上位の段の取得を目指して修行している。

こうした場を設けた理由について赤羽さんは、「多くの方々の指導、支援のおかげで、私は名人という名誉ある賞をいただくことができました。その恩返しのためにも、信州から次の名人を生み出したいという思いもあって始めたことです」

体全体を使い、無理なく無駄なくリズミカルに

そば打ち

受講生にとって、これ以上のお手本はない。赤羽さんの一挙手一投足に真剣なまなざしを向けている。この日、打ってくれたのは、そば粉1キロに対し、つなぎ200グラムのいわゆる「外二」。まず、ふるいにかけたそば粉とつなぎを、しっかりと混ぜ合わせる。水回しは、そば粉と水がムラなく混ざるように、左右の手を滑らかにしかも手早く回す。リズムよく動く手元から、香ばしいそばの香りが立ち上がってくる。無理につなげようとしなくても、そば同士が自然にくっつきだすのが不思議だ。

小麦粉のようにグルテンがないそばは、水溶性のたんぱく質が水を含むことで粘りが出て粉同士をつなげていく。そのつながる力はグルテンより弱いため、水回しを丁寧にやることが重要になるのだそうだ。なお、粉に対して45%の量の水は、半分ずつ入れるのが失敗しないコツ。最後は、水を手に取りながら水分量の微調整。

信州そば

捏ねも体全体を使ってリズムがある。余分な力が入っていないのは、体の動きが自然なことでよくわかる。無駄や無理のない動きは、やはり美しい。のしや切りに作業が移っても、いつも身体の正面で仕事をして、体全体を使う。どちらかといえば小柄な赤羽さんが、武道家のように威風堂々と見える。そば包丁で切り終えたそばの麺線は、きりっと揃い、見ているだけで気持ちがいい。

最後に、臼挽職人で挽き、赤羽名人が打ったそばを頂戴した。そのそばは香り高く、風味豊かで、のどごしもよく、ほんとうにおいしかった。

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